Special
Category
賃上げ政策の背景にあるものは?
介護職の悪待遇のひとつに「給料の低さ」があります。これを解消する手段のひとつとして国が打ち出したのが「勤続10年以上の職員に月8万円」の賃上げです。
介護職は他の職業に比べて給料が低いと先述しましたが、2017年12月7日に更新された厚生労働省の「介護職員の賃金」によると、ホームヘルパーや福祉施設の介護職員の賃金は平均21万8,500円、看護師は32万8,400円、と看護師の6割程度の給料しかもらっていないことが分かりました。この差を少しでも解消するために国は人生100年時代の政策パッケージのひとつとしてスキルと経験のある勤続10年以上の職員に月額8万円の賃上げを行うことを発表しました。しかし、8万円賃上げされるとはいえ配分は事業所が決めます。国から支給されたお金は一旦事業所に入り、そこから事業所が判断してどの職員にいくらの賃上げを行うのかを決めます。「勤続10年以上に月額8万円賃上げ」というフレーズばかりが先行していますが、すべての職員に上乗せされるわけではないことをよく理解しておきましょう。とはいえ、なかなか給料アップが叶わなかった介護業界においてこの政策は大きな一歩です。
賃上げ政策は2019年10月に実施されることが予定されていますが、ちょうど消費税が10%に引き上げられる時期と重なります。国は介護業界で長く働いている人を優遇して、介護職は給料が低いというネガティブなイメージの払拭を目的としています。
国が打ち出した勤続10年以上の職員に月額8万円の賃上げという政策の背景にあるのは、介護職員の人材不足です。介護職員は女性が多く、その中には50代や60代の人も含まれています。この年代はちょうど親が後期高齢者を迎える世代でもあるため、家庭でも介護を行っている人も少なくありません。しかし、仕事と介護の両立は難しいため仕事を離れて介護に専念する人も多くいます。介護離職を防ぐために介護休業制度をはじめとしたさまざまな制度もありますが、介護保険の仕組みは複雑なためよく分からなかったり公的なサポートがあること自体を知らず、1人で頑張っている人もいます。
介護職員の待遇が改善されれば人材不足を解消することができます。人員が増えれば施設の受け入れ体制もよくなるため、介護に追われて仕事を離職することもなくなるはずです。高齢者はこれからますます増えることが予想されているため、増え続ける高齢者の受け皿を確保するためにも介護職員の待遇改善は何を差し置いても優先して行いたいことのひとつです。
待遇や労働環境が悪いブラック施設かどうかは実際働き始めるまで分かりません。しかし、絶えず求人が出されている施設や態度が悪い面接官のいる施設、当日欠勤が難しい施設はブラック施設である可能性が高いため、求人を探す段階から細かくチェックすることをおすすめします。
介護職の給料は介護報酬によって賄われていますが介護報酬自体が安く設定されているため介護報酬自体が上がらない限り、給料も上がりません。また、低い給料のまま働き続けている人も多いため、なんとかなっていると判断されてしまい給料アップにつながらない、ということもあります。